派遣社員の上司である指揮命令者・派遣先責任者の役割と対象者

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派遣社員として就業する際、派遣先企業との雇用契約書を見てみると、「指揮命令者」「派遣先責任者」といった単語が記載されています。

この指揮命令者・派遣先責任者と呼ばれる人たちは、派遣スタッフである自分とどう関わってくるのでしょうか。

この記事では、派遣指揮命令者・派遣先責任者の役割や、その違いについて解説していきます。

指揮命令者とは

派遣先で働く際に、派遣スタッフに対して業務の指示を行う担当者のことです。派遣スタッフの就労状況を適切に管理することも求められます。

派遣契約の場合は、指揮命令者は派遣先企業の担当者となり、派遣スタッフは、指揮命令者の指示を仰ぎながら、業務を進めていきます。 派遣スタッフが就業先で複数の社員から仕事の指揮命令を受けると混乱するため、雇用契約書には指揮命令者が明記されています。

派遣先責任者が指揮命令者を兼任することもあります。

参考外部リンク派遣用語集 リクナビ派遣

つまり、指揮命令者とは「派遣スタッフに業務指示する派遣先企業の担当者」のこと。

派遣先で作業を行う際には、派遣スタッフは原則として指揮命令者の指示を受けながら働くことになります。

逆に言うと、指揮命令者以外からの指示を受けた場合、その内容が指揮命令者を通していないものであるならば、その指示に従う必要はありません。

後述しますが、指揮命令者以外からの指示まで受けてしまうと、派遣スタッフと派遣先との間でトラブルが発生してしまう原因にもなりえます。

また、派遣スタッフの就業時間や環境を管理するのも、この指揮命令者です。

指揮命令者は、労働時間や残業・休日などの「就業時間」や、派遣スタッフがセクハラ・怪我などのトラブルにあっていないかなどの「就業環境」を管理することで、派遣スタッフが円滑に業務を行えるように配慮します。

なお、指揮命令者は、後ほど説明する「派遣先責任者」が兼任する場合もあります。

派遣労働者は派遣先で指揮命令を受けて就業します。従いまして、指揮命令者は直接派遣労働者を使用し、業務を指示する立場にあります。

また、派遣先責任者が指揮命令者を兼任する場合でもあっても、実務上または派遣法上も特に問題はありません。

参考外部リンク派遣法/派遣先責任者と指揮命令者の役割 テンプスタッフ

派遣先責任者とは

では、派遣先責任者とは一体何をする役職の人なのでしょうか。

労働者派遣法第四十一条によると、派遣法の役割は以下の通りとなっています。

次の事項を派遣労働者の業務を指揮命令する者等関係者への周知

(1) 労働者派遣法及び労働基準法等の適用に関する特例等により適用される法律の規定

(2) 労働者派遣契約の定め

(3) 派遣元事業主から受けた通知の内容

  • 派遣受入期間の変更通知に関すること
  • 派遣先管理台帳の作成、記載、保存及び通知に関すること
  • 派遣労働者からの申し出を受けた苦情の処理
  • 派遣労働者の安全衛生に関し、派遣先において安全衛生に関する業務を統括管理する者及び派遣元事業主との連絡調整
  • その他派遣元事業主との連絡調整

参考外部リンク派遣法/派遣先責任者と指揮命令者の役割 テンプスタッフ

分かりにくいので簡単に説明させていただくと、「派遣先責任者は派遣スタッフの管理を行う立場である人物」になります。

具体的には

「派遣元と派遣先の間でのやり取りを担当」
「派遣元からの連絡を指揮命令者に伝える」
「派遣スタッフから苦情があがった事項を改善する」

といった役割を担います。

ちなみに派遣先責任者の対象者は、人事や労務管理について専門的な知識が必要となる重要な立場であるため、厚生労働省では「派遣先責任者は派遣先責任者講習を受けることが望ましい」とするガイドラインが制定されています。

参考外部リンク派遣先責任者講習の実施に関するガイドライン

また、派遣先責任者の制定は、企業に義務付けられたものであり、企業は派遣スタッフ100人につき1人以上を派遣先の社員の中から選任する必要があります。

ただし、派遣先が雇用する社員及び派遣社員の人数が5人以下の場合は選任の必要はありません。

同時に複数の指揮命令者から仕事を頼まれたらどうすればいい?

基本的に派遣スタッフは、指揮命令者以外からの指示を受けても、従う必要はありません。

しかし、実際に働いてみると、「〇〇さん、△△お願いできますか?」というように、指揮命令者を含めた複数のスタッフから指示を受けてしまうことが少なくはないでしょう。

ではそんな時、一体「どの作業を」「誰からの指示を」優先するべきなのでしょうか。

 

この答えとしては、基本的には「契約書類上の指揮命令者からの指示」を優先するべきです。

いくつもの指示を同時に受けてしまった場合でも、指揮命令者に判断を仰ぎ、優先順位をつけるのが最適と言えるでしょう。

そのためにも、指示を出したスタッフの方には「何時までにやっておけばいいですか?」と、作業の締切や重要度を確認しておく必要があります。

いずれにせよ重要なことは、「絶対に自分一人で判断しない」ことです。

出された指示の締切・重要度を確認した上で、指揮命令者に相談し、指示を仰いで作業に取り掛かるようにしましょう。

一人で仕事を抱えすぎてトラブルに見舞われないよう、指揮命令者への「報連相(報告・連絡・相談)」は徹底しておくことが望ましいです。

指揮命令者が不在の時はどうすればいい?

当然のことですが、指揮命令者が必ずしも常時同じ職場・フロアにいるとは限りません。

シフトの都合上、派遣スタッフの出勤日に休みをとっている場合や、出張や病欠で会社にいない場合、派遣スタッフは誰に従って業務を進めればよいのでしょうか?

不在だとどうすればいいのか分からないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、派遣スタッフは、指揮命令者がいない場合でも通常通り業務を行うことができます。

そもそも、指揮命令者は派遣スタッフが仕事の指揮命令を仰ぐ人であるため、その居場所が明確でいつでも連絡が取れるようであれば、離れたところに常駐していても構わないのです。

参考外部リンクここだけは押さえたい。派遣先の「コンプライアンス」(日本人材派遣協会)

ただし、指揮命令者の不在時に派遣スタッフが仕事をする場合には、「派遣スタッフに対してどのような指示がなされ、どのような業務を行ったのか」を指揮命令者は把握しておく必要があります。

指揮命令者と苦情処理担当者を同一人物にすることは望ましくない

派遣先での派遣スタッフの就業時間・環境を整えるのが指揮命令者の仕事です。

しかし、もしも就業中の不満やトラブルが発生した場合には、誰に相談すればよいのでしょうか?

そういった場合には、指揮命令者ではなく苦情処理担当者に相談しましょう。

派遣契約書には、指揮命令者や派遣先責任者のように、派遣スタッフが不満を抱いた際の相談先として「苦情の申し出先」が記載されています。

この苦情の申し出先が、派遣スタッフの苦情処理担当です。

なお、苦情処理担当は労働者派遣法上、指揮命令者と同一人物にすることは望ましくないとされています。

また、申し立てる苦情の内容に制限はありません。

例えば

 icon-frown-o 「パワハラ・セクハラなどのハラスメント行為を受けている」
 icon-frown-o 「職場内でいじめにあっている」
 icon-frown-o 「仕事内容が想定していた内容と大きく異なっている」

など、様々な内容について申し立てを行うことができます。

また、苦情処理担当は派遣先だけではなく、派遣元である派遣会社にも設けられています。

指揮命令者からの職場の改善が見込めないようであれば、派遣先の苦情処理担当者に。

派遣先の苦情処理担当者でも解決できないようなトラブルであれば、派遣元の苦情処理担当者に申し立てを行うことも、視野に入れてみるといいかもしれません。

トラブル回避のために、相談先を把握しよう

この記事の内容を簡潔にまとめると以下のとおりです。

この記事のまとめ

  • 指揮命令者は、派遣スタッフの「勤務」を管理する人
  • 派遣元責任者は、派遣スタッフの「契約」を管理する人
  • 「勤務」で困ったら指揮命令者へ、「それ以外」で困ったら苦情処理担当者へ

派遣スタッフが働くにあたり、契約などの最も重要な部分を管理するのは派遣元責任者です。

一方、実際に仕事をする上で接する機会が多いのは、派遣スタッフが指示や判断を仰ぐ相手である指揮命令者でしょう。

派遣契約書を受け取って確認を求められる際には、ついつい時給や就業時間の欄に目が行ってしまいがちです。

しかし、就業後の様々なトラブルを回避するためにも、「指揮命令者」「派遣元責任者」「苦情の申し出先」の欄にもちゃんと目を通し、どんな時に誰に頼ったらいいのか、しっかり把握しておきましょう。