派遣社員がフレックスタイム制で働くには「派遣会社が就業規則に定め、労使協定の締結」が必要
自分の生活スタイルや希望に合わせて勤務時間帯を調整できるフレックスタイム制。
「朝の混雑を回避したい」「銀行で用を済ませてから出勤したい」などの希望を叶えてくれるフレックスタイムの制度を利用したいと考えている派遣社員の方もいると思います。
しかし、派遣社員がフレックスタイム制を利用するには一定の条件があります。
もしもあなたがフレックスタイム制を導入している会社に派遣社員として就業する場合、派遣社員であるあなたにも、フレックスタイム制を利用することができるのでしょうか?
この答えとしては、「派遣会社の就業規則でフレックスタイム制を導入している」「派遣会社が労使協定を締結している」という2つの条件さえ満たされていれば、派遣でもフレックスタイム制を利用することができます。
この記事では、派遣社員がフレックスタイム制で働く条件やメリット、注意点について紹介していきます。
目次
フレックスタイム制とは、始業時間と就業時間を自由に決められる制度
フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。
フレックスタイム制とは、多くの場合「フレキシブルタイム」と「コアタイム」の2つの時間帯によって形成されています。
フレキシブルタイムとは、「労働者が自身の裁量で出退勤を決められる時間帯」です。
例えば、出社時間のフレキシブルタイムが8時~11時に設定されていた場合であれば、8時に出社しても、11時に出社しても、あるいは10時に出社しても構わないということになります。
一方で、コアタイムとは「必ず勤務しないといけない時間帯」のことを指します。
コアタイムが11時~15時までに指定されている場合、たとえ11時よりも早い時間帯に出勤していたとしても、15時までは退勤が許されません。
※なお、企業によってはフレキシブルタイムやコアタイムが存在しない場合もあります。
コアタイムがない場合には、労働者は労働時間を満たしていればいつ出退勤しても構わないということになります。
CHECK!
このフレックスタイム制ですが、2019年4月に法改正があり、それまで1ヶ月までだった清算期間の上限が3ヶ月に延長されました。
それまでは1ヶ月の中で労働時間を調整しなければならなかったのが、最大で3ヶ月の間で調整ができるようになったのです。
これによって、例えば「6月が繁忙期、8月が閑散期」の企業で働いている場合、「6月の繁忙期に長く働き、8月はその分早めに帰る」というように、月をまたいで労働時間が調整できるようになり、より柔軟で仕事に合った働き方が可能となりました。
派遣社員でもフレックスタイム制で働くことができる
便利なフレックスタイム制ですが、派遣先の企業で採用されていた場合、派遣社員でも活用することができます。
ただし冒頭でも述べたように、派遣会社が派遣先企業のフレックスタイム制を採用するには、
- 「派遣会社の就業規則でフレックスタイム制を導入している」
- 「派遣会社が労使協定を締結している」
この2つの条件があります。 こちらについて以下で詳しく説明していきます。
派遣会社がフレックスタイム制を採用するにあたって必要な条件
派遣会社の就業規則でフレックスタイム制を導入している
1つ目の条件は、「派遣会社が就業規則でフレックスタイム制を導入していること」です。
派遣社員の雇用主は、あくまで派遣元である派遣会社です。
そのため、派遣先がフレックスタイム制を導入していても、派遣会社が「始業・終業時刻を従業員の自主的決定に委ねる旨」を就業規則で定めていなければ、派遣社員はその制度を活用できないのです。
派遣会社が労使協定を締結している
派遣会社と派遣者の間で労使協定を締結していることも、フレックスタイム制で働くための条件の一つです。
労使協定では「清算期間(3ヵ月以内)」「清算期間の総労働時間」、「標準時間・コアタイム」など、フレックスタイム制で働くにあたっての労働時間などについてが定められます。
いずれにしても肝心なのは、「派遣会社側がフレックスタイム制で派遣社員を働かせるための制度がきちんと定められているかどうか」ということになります。
フレックスタイム制の導入が適している職種は?
フレックスタイム制は、就業時間帯にある程度幅をもたせることができるのが大きな特徴です。
では、そんな制度の導入が適しているのは一体どのような職種なのでしょうか?
現在、フレックスタイム制が多く導入されているのは以下のような職種です。
フレックスタイム制が多く導入される職種
- エンジニア・プログラマー
- Webデザイナー
- クリエイター
- 経営コンサルタント
上記職種に共通しているのは、どれもチームではなく個人での作業が多いという点です。
個人での作業が多く、チームでの作業が少ないため、好きな時間に出勤して働くことができるフレックスタイム制は向いている職種だと言えます。
顧客やクライアントと都合も合わせやすく、部内での会議などもコアタイム内に行うようにすれば、フレックスタイム制を活用しても問題なく業務を進行できます。
フレックスタイム制の導入に適さない職種は?
一方で、フレックスタイム制の導入に適さない職種もあります。
フレックスタイム制に適さない職種
- 営業職
- サービス職
「他の部署や外部の企業との連携が多い職種」は、基本的にフレックスタイム制の導入には適していません。
エンジニアのように、業務の中心が個人作業であるならば、コアタイムの活用などで連携をやりくりすることができます。
しかし、他部署や企業との連携が業務の中心となる場合、フレックスタイム制を活用することはかなり難しいと言えるでしょう。
また、チームで業務を行う職種でフレックスタイム制を導入した場合、「早く出勤した人が、遅く出勤した人を待たないと作業ができない」などのトラブルが起き、結果として作業のペースが遅くなってしまう可能性も考えられます。
フレックスタイム制は便利な制度ですが、導入する部署によっては業務が滞り、残業が発生してしまう恐れもあるのです。
派遣社員がフレックスタイムで働くメリット
メリット
- 出退勤の時間を自由に調整できる
- 残業時間を減らすことができる
- プライベートや出退勤前後の時間を有効活用できる
出退勤時間を調整できるため、自分の生活習慣やイベントに合わせた行動を取ることができる点が、フレックスタイム制の何よりのメリットです。
「朝早くの出勤が苦手だから遅く出勤したい」「週末は早く帰ってゆっくりしたい」といった個人的な事情でも、出退勤の時間を調整することができます。
あるいは、土日には行きにくい病院や銀行などに向かった後に出勤したり、退勤時間を早めて美術館や催し物に行ったりするなど、限られた時間を有効的に使うこともできます。
自分で退勤の目標時間を定めることによって、仕事に集中できたり、個人的な作業の時間配分を行うことで効率よく作業をこなすこともできるため、業務内容の改善にも繋がります。
派遣社員がフレックスタイム制で働くデメリットは?
デメリット
- 時間にルーズになる可能性がある
- 総労働時間は変わらない
- そもそもフレックスタイム制を導入している派遣会社が少ない
フレックスタイム制は、基本的に個人の裁量によって勤務の時間帯を調整する働き方です。
そのため、時間にルーズな人はそれが助長される可能性がありますし、そうでない人も時間に対する感覚が甘くなってしまう恐れがあります。
また、残業が減るとは言え、合計の労働時間そのものが変わるわけではありません。
加えて派遣社員は時給制であるため、「短い時間だけ働いて、今までと同じ給料」ということにはまずならないのです。
さらに、これは大前提の話になるのですが、そもそもフレックスタイム制を導入している派遣会社は非常に少ないです。
フレックスタイム制を導入した場合、派遣会社側はそれぞれの派遣社員の就業時間について今以上の細かい管理をしなければならなくなります。
それよりは、あらかじめ決まった労働時間で働いてもらった方が管理もしやすく、業務のフォローもしやすいのでしょう。
【注意点①】派遣先企業でフレックスタイム制を導入していても、あなたが使えるとは限らない
「派遣先の企業がフレックスタイム制を導入していて、かつ派遣会社もフレックスタイム制を採用している」からといって、必ずしも自分もフレックスタイム制で働けるとは限りません。
派遣先企業との契約を結ぶのは、あくまで派遣元である派遣会社です。
派遣会社と派遣先企業との契約の際に、「派遣社員はフレックスタイム制を使わない」という契約を結んでいたのなら、条件が整っていたとしても派遣社員はフレックスタイム制では働けないのです。
本来派遣社員とは、繁忙期などで人手が足りない場合に期間を定めて雇用されるスタッフです。
その性質上、「繁忙期に集中し閑散期はゆとりを持って」というフレックスタイム制導入の目指すものと、派遣社員の相性は、あまり良いとは言えないのかもしれません。
【注意点②】フレックスタイム制が導入されても実質使えない職場も多い
また、フレックスタイム制が導入されていても、実質使えない職場も多いです。
大手転職サイト「マイナビ転職」では、フレックスタイム制が導入されている企業で働く人に向けて、「出退勤の時間を思うように決められないことは、どれくらいの頻度でありますか?」というアンケートを取っています。
画像引用:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/65
「フレックスタイム制なら自由に出退勤できるか?」という質問に対し、出退勤の時間が思うように決められないと感じる頻度は、
「毎日」と答えた人が23.9%、「週に3~4回」と答えた人が20.9%
と、約半分近くの人が、「週の半分以上は自由に出退勤の時間を決められない」と答えています。
「他のスタッフが使わないから使えない」という周囲に配慮する声も多く、実際に制度を導入している企業でも、それが最大限に活用されているとは言えない実情があります。
派遣社員がフレックスタイム制で働くのは難しく、メリットも少ない
フレックスタイム制は、制度の中身だけ見るとかなり魅力的な制度のように思えます。
しかし、実際にフレックスタイム制を導入している派遣会社は極めて少なく、加えてフレックスタイム制の本来の目的から考えると、派遣社員が活用するメリットは少ないのが現実です。
派遣社員は雇用期間が短いものの、ある程度自分の働きたい時間帯・労働時間に合わせた仕事を選べる点が魅力の雇用形態です。
フレックスタイム制で働くことにこだわるよりも、初めから自分のライフスタイルや希望出勤時間帯に合った求人を探してみるのがいいのかもしれません。
厚生労働省は、フレックスタイム制について以下のように説明しています。