

これまで、社会福祉施設や保育園などの医療機関ではない施設への看護師の日雇い派遣は法律で禁止されていました。
しかし、新型コロナウィルスの影響で看護師の人員不足が深刻になってきていることから、2021年4月から例外的に病院や診療所などの医療機関ではない介護施設・社会福祉施設など、医療機関ではない施設に限り、看護師の日雇い派遣が容認される方向で検討が進んでいます。
日雇い派遣は雇用期間が短すぎるため、労働者が十分な教育・研修などを受けられないことや事故発生時に十分な補償がされないなどが懸念されていました。
ですが、昨今の看護師の人手不足を背景に、看護師の日雇い派遣を解禁する動きが強まっていますが、反対意見も多く物議を醸しています。
この記事では、日雇い派遣に興味を持っている看護師さんに向けて、日雇い派遣で働く際の条件から、日雇いが容認されたことに対し現状どのような意見があるのかについて紹介していきます。
目次
日雇い派遣とは、労働契約期間(派遣元と労働者で交わされる契約期間)が30日以内の派遣のことを指します。
しかし、2012年10月1日施行の改正労働者派遣法で日雇い派遣は原則禁止となっており、認められていません。
日雇い派遣を原則禁止にすることで、派遣労働者を守り、雇用の安定を図っています。
ですが、”原則”禁止となっているように、日雇い派遣には例外事由があります。
例外事由(例外事由には「従事する業務」と、「従事する人」の2つがあります)に当てはまる場合は、日雇い派遣で働くことが可能です。
看護師に関しても2021年4月から日雇い派遣が条件付きで認められるようになっています。
日雇い派遣は原則禁止。働ける条件と例外事由をやさしく解説
(日雇い派遣について、もう少し詳しく知りたい方はこちらのページがオススメ)
解禁された主な理由としては、へき地は医師や看護師などの医療従事者が深刻な人材不足に陥っており、人材不足や医療の質の向上を図るため、看護師・准看護師だけでなく薬剤師・臨床検査技師・診療放射線技師についても派遣が認められることになりました。(日雇い派遣の解禁については、准看護師・薬剤師・臨床検査技師・診療放射線技師は対象に含まれません。)
看護師の日雇派遣について様々な考え方がありますが、多くの看護職が加入している日本看護協会によれば、下記の意見を発表しています。
日雇派遣には雇用管理上の問題が懸念され、積極的には賛成できないが、日雇派遣を解禁するのであれば、雇用管理、医療関連業務の適正実施の確保を求める
では、なぜ積極的な賛成ができないのでしょうか?
これについて看護協会は、看護師の日雇い派遣にはいくつかの問題点があるとしています。
問題点としては、まず派遣労働では契約にはない業務を求められたり、労働時間が曖昧などの課題があります。
とくに看護現場ではイレギュラーなことが起こりやすいため、派遣の場合あらかじめ決められた業務内で仕事をすることが困難です。
さらに日雇派遣では、契約期間が短期なので仕事に慣れることが難しいなどの問題があることを看護協会は懸念しています。
厚生労働省によれば、看護師の日雇い派遣を容認したのは下記に記した内容が主な理由としています。
看護師等の確保が困難になっている場合があることから、看護師等の確保のための選択肢の一つとして看護師等の労働者派遣を認める必要性が高いこととしたものであること
解禁された看護師の「日雇い派遣」導入に慎重な議論が必要だったのに、モリカケと同じ「結論ありき」のプロセスが疑われる
看護師「日雇い派遣」に漂う怪しい規制改革 渦中のスーパーナース取締役を直撃!(日刊ゲンダイ)#Yahooニュースhttps://t.co/PBXfB9RsJ1
— 愛知県医労連 (@irouren) May 13, 2021
Nsの日雇い、ずっと同じ職場にいるわけじゃないから患者のこと分からないやん
— ブリざえもん (@number31415) May 16, 2021
看護師さんの日雇派遣を政府が解禁するが、本日、党の厚労部会で重大な事実が明らかになった。規制改革要望提出日が平成30年5月。要望主体であるNPO法人日本派遣看護師協会の認証日が平成30年7月。即ち存在しない団体から要望が出された後に団体が出来た、という時系列になる。出来レースだったのか。
— 川内 博史 (@kawauchihiroshi) March 30, 2021
ワクチン接種。日雇いの看護師募集してくれれば全然いくけどなぁー。この日のこの時間だけ。みたいな感じでお小遣い稼ぎできたらいいのに。
— うぃんぐ (@tsubAtiiiiy) May 18, 2021
看護師の日雇い派遣に関して調べてみると、Twitter上では様々な意見が飛び交っていますが、批判的な意見が目につきます。
日雇いだとずっと同じ職場にいないから患者のことが分からないなど、色々な意見はあると思いますが、筆者自身は看護師の日雇派遣については賛成です。
なぜなら、看護師の日雇派遣は副業として選択しやすいからです。
現代には様々な働き方があり、本業の合間に副業をする人も増えてきています。
副業として看護師をしている人もおり、時間に余裕があった時に気軽に働くことができるという意見や、常勤で働くよりも単発や派遣看護師の方が稼ぎやすいなどの意見もあります。
そのため、今回の看護師の日雇派遣は副業の観点からみたら働き方の幅が広がるため、個人的には良い制度だと思われます。
看護師の日雇い派遣には反対意見も多く見受けられます。
看護師の日雇い派遣に反対する声で最も大きく取り上げられているのが、看護師の日雇い派遣は企業自らの利益拡大に過ぎないということについてです。
これは、看護師の日雇派遣の解禁を提案したNPO法人の実態が看護師派遣会社「スーパーナース」だったことが判明したため、利益を誘導していると考えられるためです。
看護師の医療機関以外への日雇い派遣 4月から解禁
日本共産党の倉林明子議員
安全リスクが高まる日雇い派遣は原則禁止に戻すよう求めました。
11日の参院厚生労働委員会ここが大事→ 企業が自らの事業拡大につながる規制緩和を要望できる仕組みこそやめるべきです!https://t.co/UPr7I0cqXj
— しんぶん赤旗 (@akahata_PR) May 12, 2021
実は「スーパーナース」の代表である滝口氏は、「規制改革ホットライン」の改革会議で専門委員を務めていました。
規制改革ホットラインとは、国が個人や企業から提案を受ける仕組みのことで、現状の規制や制度の問題点、改善の必要などをインターネット上から直接内閣府に訴えることができます。
滝口氏は自身が改革会議のメンバーの時に、自らの会社の利益拡大につながる「看護師の日雇派遣の解禁」を内閣府に相談していたのです。
このような背景があり、看護師の日雇い派遣は企業自らの利益拡大であり、原則禁止にするべきだと反対されています。
看護師の日雇い含む短期派遣の懸念点としては、医療の質の低下や労働条件の悪化が指摘されています。
例えば、長期間同じ職場で働いていれば、職場独自のルールや患者の情報を把握しているため、円滑に仕事を行うことができます。
しかし、日雇い派遣となると、職場独自のルールや患者の入院の経過や治療方針など細かな情報が分かりません。
情報が不足している中でケアを行うことは事故のもとになりますし、患者の変化にも気付けない可能性があるため、医療の質の低下につながります。
このようなことを予防するためには、各職場で日雇い派遣の看護師を対象とした教育・研修の機会を充実させる必要があります。
しかし、教育や研修を行うにも人手が必要です。
職場の人員には限りがありますし、教育・研修を行う時間そのものの確保も難しいところもあるでしょう。
例えば、抗生剤の投与時間や食後の血糖測定などは時間厳守で絶対にこの時間に行わなければいけません。
もしも教育・研修の時間を確保できても、上記の処置が時間内にできなければ医療事故につながってしまいます。
このように、人手不足かつ時間厳守の中で動かなければいけない看護師にとって、日雇い派遣の看護師を対象にした教育・研修を実施することには課題があるのです。
看護師の日雇い派遣の解禁によって、看護師の人手不足が解消されて良いという意見もありますが、反対意見も多いです。
利権が絡んでいることや、そもそもとして日雇い派遣自体が医療の質の低下や労働条件の悪化を招くのではないかという問題点があります。
日々現場で働いている看護師からは副業の需要も高くなっているので、賛成意見も多いのですが、日雇い派遣については今後も議論を重ねていく必要がありそうです。