派遣先でケガをしたら労災は適用されるの?
どんなに慣れた作業でも、時に人間はミスをしてしまいます。
派遣社員の方が仕事をしている時も同様で、仕事中に怪我をしてしまう可能性も十分に考えられます。
こんな事態になってしまった時に役立つのが労災保険。
派遣社員の方も、労災についてしっかりとした知識が無ければ、万が一の時に泣き寝入りをすることにもなりかねません。
労災保険の基礎知識と、派遣先で怪我をしてしまった時の対処法について解説します。
目次
労災の簡単な説明と派遣社員も対象になるのか?について
労災保険とは「労働者災害補償保険」の略称で、業務中の怪我や疾病、障害が残ってしまった場合、不幸にも亡くなってしまった場合に必要な保険給付をする制度で、「労災は派遣社員を含む全ての労働者に適用される」という原則があります。
正社員だけでなく派遣社員や契約社員の方も労災の適用を受けることが可能です。
「派遣社員やアルバイト等の非正規雇用労働者は労災の適用者ではない」と誤解している方も多いので、派遣スタッフ自身がきちんと理解をしておかないと、万が一の時に損をしてしまいます。
派遣社員の場合は、雇用元である人材派遣会社で労災の適用を受けることになっています。
実際に勤務するのは派遣先企業ですが、労災に関しては雇用契約が重要になり、派遣会社の労災が適用されることになるのです。
派遣社員が労災保険を使用するのはどんなケース?
力仕事をしている訳ではないなら、怪我をするなんて滅多にないのでは?と思われるかもしれませんが、派遣の仕事の中にも怪我の危険はいくつも潜んでいます。
例えば、
- お湯や油のよるやけどを負ってしまう
- 金庫の重い扉に指を挟んでしまう
- カッター等の事務用品で指を切ってしまう
- 社内で転倒し、打撲やねん挫を負ってしまう
このような事故によるケースが労災認定される事例になります。
つまり、室内で事務仕事をしていても、怪我をする可能性は大いにあるのです。
派遣社員が勤務中に怪我をしてしまったら【覚えておくべき5つのポイント】
万が一、就業中に派遣先で怪我をしてしまった時に覚えておくと良いのは以下の5つです。
- 就業中の怪我で病院を受診する場合には、労災であることを必ず伝える。
- 労災を利用したい旨を、派遣会社に連絡する。
- 派遣会社による労災の証明書に加えて、派遣先企業からの証明書が必要になる。
- 証明書には「捺印(シャチハタでない印鑑が好ましい)」が必要。
- 必要書類が揃ったら「労働基準監督署」に提出する。
この5つのポイントは必ず覚えておくようにしましょう!以下に派遣社員のよくある労災についての疑問についてまとめました。
誤って健康保険を利用してしまった場合の対処について
就業中の怪我や病気で病院を受診した際、最初に労災である旨を伝えるのが一番ですが、突然の出来事なので、うっかり加入している健康保険を使用してしまった場合は、後から申請する必要があります。
受診した病院に労災である旨を伝え、健康保険から労災保険への切り替えが可能だと言われれば「療養補償たる療養の給付請求書」に記入し、提出します。
また、自分が加入している健康保険組合にも、労災なのに誤って健康保険組合を使ってしまった旨を連絡しておきましょう。
そうすると、返納の領収証が届くので、それを労働基準監督署に送付すると、治療にかかった費用全額が返還されます。
労災って自己負担はあるの?
労災が認定・適用された場合は自己負担しなければならないお金はありません。
受診する病院によっては、一時的に治療費を立て替える場合もありますが、後日、労災保険によってその治療費は戻ってくるので安心してください。
通勤中の怪我に労災は使えるの?
通勤中の怪我も労災として認定されます。
ですが、注意が必要なのは通勤経路を大きく外れていた場合です。
例えば
- 退社後に友人とのディナーの為に通勤経路ではない場所を通り、怪我をしてしまった
- 通勤経路にはないショッピングセンターに買い物に行った時に階段でこけて足の骨を折ってしまった
というように、通勤経路を大きく外れて怪我をしてしまった場合は「通勤途中」とは見なされず、労災認定はされないのです。
労災が適用されてる期間中は休業補償って受けられる?
就業中の怪我や病気の治療費はもちろん、それに伴って仕事を休まなければならなくなってしまった時の、休業補償も受けることも可能です。
休業補償は「療養の為に4日以上休業して給与が受け取れなかった場合」に支払われます。
また、「障害(補償)給付」や「遺族(補償)給付」も存在します。
就業中の怪我や病気によって、身体に障害が残り一定の障害等級に該当した場合や、万が一その派遣社員が亡くなってしまった場合、遺族に給付金が支払われるのです。
派遣先を退職した後も労災は支払われるのか?
派遣社員は契約期間が短いので、労災認定を待っている間に契約が終了してしまったり、怪我や病気が原因で、退職を余儀なくされるケースも十分にあり得ます。
ですが、退職をした後でも労災の手続きは可能です。
既に退職してしまったから労災保険は適用外だと勘違いしていると、損をしてしまうので、しっかり覚えておきましょう。
「労災隠し」があるなら労働基準監督署に相談しよう!
労災隠しとは、労災保険が適用されるのにもかかわらず、派遣社員からの申し出に対して「今回の怪我については労災は適用はできません」「健康保険を使ってください」「会社が治療費を負担するから」等と言われ、労災を使わせてもらえないことです。
本来は、必ず加入していなければいけない労災保険に派遣会社が加入していない場合に、それを隠して使わない方向に促されるケースがあるのです。
また、労災保険に加入していたとしても、派遣社員に労災を使うと、その分保険料が上がってしまうので、それを嫌って、労災適用を避けようとするケースもあります。
そのような労災隠しが巷で行われているので、労災の証明書をなかなか発行してもらえない事もあるのです。
もし、あなたが今そのような立場に立たされている場合は、今すぐ「労働基準監督署」に相談して下さい。
派遣社員も、就業中の怪我や病気は、労災で補償されるという知識をきちんと頭に入れておくことが大切です。