【派遣社員の残業】サービス残業への対応と残業代の計算方法について
2007年に放送されていたTVドラマ「ハケンの品格」の中で、篠原涼子が演じる”大前春子”は「残業は一切しない」というポリシーを持ってバリバリ仕事をこなしていましたが、これはあくまでドラマの中の話。
実際は、派遣社員も残業を頼まれたり、中にはサービス残業になってしまっていたり、残業を断りたくても断れなかったり、と悩みは尽きません。。
ここでは派遣スタッフの残業の実態や、残業代の計算方法について詳しく解説しています。
損しない為にも時間外労働について学びを深めましょう。
目次
派遣社員はどのくらい残業しているのか?【実態】
派遣会社に登録して派遣スタッフとして働く魅力の一つとして、正社員と比較して残業時間が圧倒的に短いことが挙げられます。
正社員は、決算月や繁忙期には、会社の業績や自分の成績の為に残業をして仕事を片付けなければなりませんが、基本的に派遣社員は09:00~17:00など時間が決まっています。
ですから、派遣社員に関しては「残業自体は少ない」というのが一般的な認識になります。
ですが、派遣社員の中には、毎日定時で退社できている人もいれば、毎回15分~30分程度のサービス残業を余儀なくされている人も一部いるのです。
「派遣社員は残業がゼロ」だと思い違いをしている人も多いですが、実情はそうではないのです。
ただ、正社員同様、派遣社員の残業時間も個人差があるので一概には言えませんが、平均すると派遣の方が正社員より残業時間が少ないのは確かです。
実際の業務の指示は派遣先企業に従うのが派遣の原則
派遣社員も、規定上は残業可能となっている場合がほとんどです。
これはつまり、人材派遣会社と派遣社員の間で36(サブロク)協定が締結されているということになります。
派遣社員の雇用元は派遣会社ですが、実際の業務指示は派遣先企業に従うというのが原則なので、派遣先企業が繁忙で残業をしなくては業務が滞ってしまうのであれば、当然残業を依頼されることもあります。
いくら派遣社員とは言え、派遣先企業で仕事をし、かなりの時間を共有しているので、忙しくしている人たちを横目に見ながら「お先に失礼します」とは、中々言いにくく、職場内での協調性が重要なのです。
特に残業が出来ない理由がなければ、快く引き受けた方があなたへの好感度も上がるでしょうし、当然ですが残業代も稼げます。
ただ、派遣先企業は人件費を抑えるという理由もあって派遣社員を雇用していることを忘れてはなりません。
派遣社員がダラダラと残って仕事をしていては、その分残業代を負担することになります。
月給制や出来高制の正社員は、夕方に一息つく為にコーヒーを買いに行くこともあるでしょうが、派遣社員は時給制であるということを意識しなくてはなりません。
ダラダラと会社に残っていると、残業代だけを稼ごうとしているように思われてしまうので注意が必要です。
派遣社員は残業を断ってもいいの?
正社員と違って派遣の場合は、基本的に定時で帰れるのがメリットなので、残業なんてやりたくない!という考えを持つ人が多数いらっしゃいます。
- 「なるべく残業のない仕事がしたいから」という理由で派遣を選択していている子育て中の女性
- 「定時退社した後の時間を自分の趣味の時間に充てたい」という独身男性
など、残業をやりたくない理由は色々ありますが、上司から残業を依頼された場合に断るのは現実的に可能なのでしょうか?
この回答としては、上司から残業を依頼された場合、元々の契約が「残業なし」であれば、堂々と断ることが可能です。
ですが、基本的に残業というのは、仕事が終わらないからするものなので、場合によっては派遣社員でも柔軟な対応が求められます。
例えば
- 自分のミスで仕事に大幅な遅れが出てしまっている
- 今日中にやっておかないと取引先に大きな損失を出してしまう
という様な事態になっている場合は、残業してでも現状復帰に努める努力が派遣と言えど必要でしょう。
ただ、人によっては子どものお迎えがあるなど、どうしても残業はできない理由がある人もいるので、定時を回っての仕事が難しいなら、契約時など事前にきちんと伝えておくのが重要になります。
ですが、未婚で子どももいないなど、特に断る理由がないなら、できるだけ柔軟な対応が求められます。
これは、上記で述べたように「派遣されている企業内での強調性が大事だから」や「派遣社員を採用するのは必要なところに必要な人材をスポットで使いたいから」いうのが大きな理由で、忙しい時に嫌な顔せず残業して手伝ってくれる人材の方が会社からの人望は厚くなりますし、何で企業が高い時給を払って派遣を募集しているのかを考えることが重要です。
残業に応じるか?応じないか?は、広い意味で捉えると「次の契約を更新するかどうか」にも関わってくるので、「ごめんなさい無理です」と、頑なに断るのではなく、柔軟な対応が残業をお願いされた時のカギになります。
今の日本では「残業するのが当たり前」「長く働いた方が評価される」など、遅い時間まで会社に残っていた方が頑張っていると評価されやすい現状があって、反対に定時で帰る人間はやる気が無いとみなされてしまう風潮があるので、派遣社員といえど、残業を毎回断る人への評価はあまり高くないのです。
派遣社員のサービス残業を許すな!
派遣で働く人の中にはサービス残業をコツコツ毎日やっている人(汗)も珍しくありません。
- 「10分、20分の残業時間を申告するなんてケチケチしているようで、気が引ける」と派遣社員自身が申告を渋るケース
- 「毎日30分も残業していると、仕事を進めるのが遅いと思われるのではないか」と、自分の評価を気にするケース
サービス残業をしている理由は様々ですが、残業代を支払わないのは完全にルール違反です。
一日数十分の残業だとしても、塵は積もれば山となり、長い目で見れば、本来支払うべき残業代はかなりの金額になります。
断れない環境下に置かれて、サービス残業を半強制的に求められているのであれば、登録している派遣会社の担当者に正直に話し、問題を解決してもらえるように対処してもらいましょう。
派遣先企業と登録スタッフの間を取り持ってくれるのが、人材派遣会社の役割でもあるので、トラブル解決に向けて行動してくれるので、自分一人で悩んでないでちゃんと相談することが大切です。
【残業代の計算方法】会社任せにしない!
時間外労働をしているなら、残業代がきちんと支払われているかどうか、自分で確かめる必要があります。
会社に全てを任せるのは危険です。
残業は大きく分けると
- 法定内残業
- 法定時間外労働
の2つに分かれます。
労働基準法で定められた労働時間は「1日8時間」「1週間で40時間」
これを超える数値になるかどうかがポイントになります。
【例】
定時が9時~17時までの8時間で、1時間の休憩時間がある場合
→18時まで働いた時点で1日8時間労働したことになります。
17時~18時までの時間は定時を過ぎていますが、これは法定内残業とカウントされることがポイントです。
そして、法定時間外労働に関しては、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払わなくてはならない決まりがあります。
・割増賃金の種類
種類 | 賃金割増率 |
法定時間外労働 | 25% |
深夜労働 | 25% |
法定時間外労働+深夜労働※1 | 50% |
休日出勤 | 35% |
休日の深夜※2 | 60% |
※1.法定時間外労働25%+深夜労働25%
※2.休日出勤35%+深夜労働25%
実際の残業代の計算方法ですが、法定内残業に関しては「勤務時間×時給」で求められます。
法定時間外労働の場合は「勤務時間×時給×1.25」となります。
- 定時
- 法定内残業
- 法定時間外労働
の差をきちんと理解しておくと、計算そのものは簡単です。
定時で帰る派遣社員は、正社員からどう思われているのか?
高い時給を払っている派遣社員が、残業をしないで定時で帰ることに対し、嫌悪感を抱いている正社員が一部いるのも事実。
特に繁忙期やトラブルで忙しい日などは、「社員はこれだけ頑張っているのにもう帰るの?」という視線で見てくる正社員も少なくありません。
ですが、そこで働く社員からすれば「もう帰るの?」という意見になりがちですが、企業からすれば残業すれば更に高い時給を払わなければいけない事情があるので、基本的には定時で帰ってほしいのです。
つまり、現場目線からすれば「このクソ忙しい時に定時で帰りやがって」ですが、企業サイドからすれば「残業なしでOK」なのです。
「私だけ定時で帰るのは後ろめたいから」と、サービス残業を率先してやってる派遣スタッフも中にはいますが、正社員からの視線を気にし過ぎる必要はありません。
ただ、もし残業をお願いされたのなら、可能な日はできるだけ応じて、派遣先企業の力になる努力をすることも時には大切になります。
サービス残業で悩んでいるなら、登録している派遣会社に相談しよう
「半強制的に時間外労働になってて、自分では言い出しにくいので代わりに改善するように伝えてほしい」
「毎日短い時間なんだけど、その分のお給料を付けてもらえないか?」
など、契約にない残業を無報酬でさせられるのはあまり良い気持ちではありません。
もし、あなたの派遣先が、1日たった10分、15分でもサービス残業が当り前になっているなら、登録している人材派遣会社の営業担当者に相談をするのが最善の方法です。
担当者に改善してほしい要求を直接伝えておけば、担当者があなたの代わりに企業に改善してほしい内容を伝えてもらえます。
派遣社員の残業事情は派遣先の企業によって様々。
残業に関しては、派遣先企業とも日頃のコミュニケーションの中でお互いの意志を確認しておくことも大事になるでしょう。
営業時間外での業務が必要なら、きちんとお願いされて、こちらも気持ち良く引き受けて、しっかりとした対価(残業代)を支払ってもらえるようにしておきたいものです。