【2018年問題】で働く先が突然なくなる?派遣社員が取るべき対策とは?

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2017年3月の調査では、勤務期間が決められた有期雇用契約の派遣労働者は年々増加しており、全国で見ると契約社員の形態が「394万人」、パート形態の労働者は「992万人」も勤務しています。

そんな派遣労働者の「次の就業先が決まらない」という雇用の不安定さが問題視され、2012年と2015年に労働者派遣法と労働契約法が改正されました。

 

その影響で起こると予想されているのが『2018年問題』です。

 

派遣会社や雇用先に対して「無期雇用の安定化」や「待遇の改善」などを求められるため、派遣労働者には非常にメリットが多い面もありますが、不安視する声も多数あるのが実情です。

そこでこの記事では、2018年問題のポイントや影響、企業の取る行動から派遣労働者の対策まで、すべてをまとめました。

2018年問題とは?|派遣労働者の働く先が突然なくなる!?

2013年に改正された労働契約法と労働派遣法、この2つの法改正で

「有期雇用契約者」(=勤務期間が決められた派遣労働者など)が5年働いた場合、労働者より希望があれば「無期雇用契約者」(=アルバイトやパート、正社員のうち、勤務期間が決められていない労働者)へ転換できる。

という新しいルールが設定されました。

 

これにより、「有期雇用契約者(派遣労働者)は安定した無期雇用契約で働くことができる」ようになります。これは派遣で働く人にとっては大きなメリットでしょう。

ですが、この新しいルールには「雇用者側は無期雇用契約を求められると断ることができない」という制約もあります。

 

つまり、雇用者側は必ず長期の雇用をする必要があるのです。

長期間働くということは、労働賃金も自然と増え、雇用者側はこれまでよりも高いコストを払わなければならないリスクが生じます。

それを防ぐために、雇用者は『有期雇用契約者の雇用解除や、そもそも採用を少なくする対策』に打ち出すことが懸念されているのです。

 

その新ルールが適用される年が2018年から始まるため、2018年に派遣労働者や有期雇用契約者の働く先が突然なくなり、同時に働く場所が大幅に減ってしまうことが危惧されて『2018年問題』として取り上げられています。

2018年問題は、派遣労働者を含む有期雇用契約者にとっては大変重大な問題なのです。

 

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5年ルールにより無期雇用契約へ転換|労働契約法や労働者派遣法の改正

5年ルールと雇止めの法理化。改正された労働契約法

労働契約法とは、2010年3月1日から適用された、労働に関する新しい法律です。

この中には、有期雇用契約に関する改正も明記されています。

労働者と雇用者が、より良好な関係になることを目的として作られたため、勤務の契約や継続、終了、そして労働者の健康に配慮する法律が定められました。

 

その労働契約法が2012年に大幅に改正されました。

改正の目的は「有期雇用契約者の雇い止めを減らして労働環境を改善すること」です。

有期雇用契約では、リーマンショックの影響で契約期間が更新されずに雇用を解除される「雇い止め」が問題視されていました。

そこで雇い止めを無くすために、労働契約法は改正されました。その重要な内容は以下の通りです。

労働契約法の改定のポイント

・無期労働契約への転換(5年ルール)

有期労働契約が更新され続け、通算5年を超えた有期雇用契約者は、申し出ることで期間の定めのない「無期雇用契約」に転換できます。

これを5年ルールと呼びます。

・「雇止め法理」の法定化

雇い止め法理とは「問題もなく、有能な有期雇用契約者の場合、契約期間が満了した際に理由もなく契約を打ち切ることを認めない」という法案です。

これにより、一定の条件以外での「雇止め」は認められません。

・不合理な労働条件の禁止

無期雇用契約者と有期雇用契約者の間で明らかに労働条件に差をつけ、有期雇用契約者に不合理な労働条件を設定することを禁止しました。

これらはすべて2013年4月1日より適用されています

この3つの法案により、有期雇用契約者は良好な労働環境で働くことができます。

そして、これは2013年4月1日より有効なため、「5年ルール」で考えると、2018年4月1日以降に「無期雇用契約への転換」が適用されます。

この時期に、有期雇用契約者の環境が大きく変わることが予想されています。

待遇改善、3年ルールで雇用の安定化を図る|改正された労働者派遣法

労働者派遣法とは、1986年に制定された法律です。

有期雇用契約者は「雇用期間」が定められています。

そのため、雇用が安定せず、また無期雇用契約者よりも低賃金が設定されたり、福利厚生を受けられない労働環境が問題視されていました。

その労働環境を改善するために「雇用の安定化や、賃金の安定・福利厚生を得る権利などの労働条件」を、法律できちんと定めた有期雇用契約者のための法律です。

 

その「労働派遣者法」が2015年に改正されました。大きく変わった点は以下の通りです。

労働者派遣法の改定のポイント

・キャリアアップ訓練の義務化

派遣会社は、派遣社員が就業中に必要な知識や能力を身につけるための教育訓練を取り入れること、およびキャリアコンサルティングを実施することが義務付けられました。

同時に、就業先に対しても、派遣元(就業中の派遣社員が所属する派遣会社)より教育訓練が必要と申し出があった場合、できる限り協力することが求められます。

・同一派遣先の就業期間を3年とする

就業先の事業所は、同じ派遣会社から派遣社員を勤務させる際は「最長3年まで」にすることが定められました。

3年を超えて労働させる場合は、過半数労働組合への意見聴取が必要になります。

同じく派遣社員に対しても、同じ組織(課やグループなど)の就業先に勤務するとき、最長3年までしか働けません。

継続して、さらに3年勤務する場合は、派遣元に対して「雇用安定の措置」を求めることができます。

これにより

  • 就業先の直接雇用
  • 新たな就業先の紹介
  • 無期雇用契約者としての紹介もしくはその機会を与える
  • 紹介予定派遣の紹介

上記のいずれかの措置が取られます。

労働派遣事業所を届出制から『許可制』へ

これまで労働派遣事業所は、「許可制もしくは自主の届出制」で事業所として認められていました。

ですが、上にあるような「キャリア形成支援制度(キャリアアップ訓練)を有すること」を始めとした条件を満たしていないと、労働派遣事業所として認可しないことを定めました。

これにより、就業先は法令厳守された健全で正しい派遣会社(労働派遣事業所)より派遣社員を受け入れることができます。

有期雇用者と無期雇用者のバランスを考慮した待遇の推進

有期雇用者と無期雇用者の間で待遇の違いをなくすため、派遣会社は派遣労働者に対して「均衡(両者のバランス)を考慮した待遇の確保」が義務付けられました。

これにより、両者の違いは極めて少なくなります。

同時に、派遣労働者は派遣会社に対して

  • 賃金水準の決定
  • 教育訓練の実施
  • 福利厚生の実施

の3点を求めることができます。

求められた派遣会社は、有期雇用者と無期雇用者の均衡が保たれていることを証明するために、これを説明することが義務付けられています。

 

就業先に対しても、派遣会社は

  • 派遣労働者と同種の業務に取り組む無期雇用契約者の賃金水準
  • 派遣労働者と同種の業務に取り組む一般労働者の賃金水準
  • 派遣労働者と同種の業務に取り組む無期雇用労契約者の募集時の求人条件

これら3つのうち1つの情報開示を求めることができます。

さらに、「派遣労働者に対しても給食施設、休憩室、更衣室などの施設を利用する権利も認める必要がある」という流れができています。

これまでの派遣労働者の待遇がいかに悪かったのかが伺えます。

 

これらの新ルールにより、派遣労働者の労働環境は大きく改善します。

3年ルールの導入により、雇用の安定化を図ることができ、派遣労働者(有期雇用契約者)は無期雇用契約者と同等の待遇を得る機会が増え、同時にキャリアアップおよび昇給する可能性も高くなりました。

これまでよりも働きやすくなることは間違いないでしょう。

 

しかし、良い面ばかりではありません。

冒頭でお話した通り、派遣労働者にはメリットがありますが、就業先の企業にはデメリットが多くなります。

特に経営する側としては、『労働賃金』『人件費』が大幅に増えてしまうことは大きなデメリットであり、避けたい問題なのです。

 

2018年問題を受けて「企業側はどのような対策を取るのか?」「派遣労働者はどう対処すればよいのか?」をお伝えします。

 

2018年問題を受けて企業が取る対策

① 無期雇用契約を含めた採用および雇用の見直し

まずは「現状どの程度の有期雇用契約者が勤務しているのか?」という現状の把握と、「人件費はどの程度増えるのか?」という人件費の見直し・赤字を少なくする措置が行われます。

これにより、有期雇用労働者の働く場所が少なくなる可能性が高くなります。

② 契約期間満了直前の雇い止め

これには改正された労働契約法のうち、「5年ルール」と「雇止め法理の法定化」が大きく関係します。

通算5年の勤務を満了する前の契約で「次回は勤務契約を更新しません」と伝え、労働者も合意した上でその旨を書面に残した場合、契約の更新はできなくなります。

労働者も同意している以上、「雇止め」として裁判所も認められない可能性が高くなり、無期雇用契約を求める権利がなくなります。

この方法は弁護士も「有効な手段」として宣言しています。(必ずしも有効であるとは言いきれません)

そのため、企業側はこの方法により無期雇用契約を避けることができます。

2018年問題で派遣社員が取るべき対策|雇用安定の措置や派遣会社の選び方が重要

① 部署移動で勤務継続を狙う

この方法は同じ派遣先に有期雇用契約者として勤めたい場合に有効な手段です。

改正された労働者派遣法で説明したとおり、「同一の課で働けるのは最長3年間」と定められています。

しかし、部署を異動すれば同じ派遣先に勤め続けることができます。

そのため、もしも同じ派遣先に勤めたい場合は、派遣元もしくは派遣先に部署異動や、派遣先の違う部署で働きたいと申し出ると良いでしょう。

もしも、求人に空きがあった場合や、もしくはあなたが派遣先と良好な関係を築けていた場合は希望が通るかもしれません。

② 雇用安定の措置を求める

労働者派遣法で触れたとおり、同じ派遣先に3年以上勤めることができない代わりに、派遣元に「雇用安定の措置」を求めることができます。

これを利用して、

  • 就業先の直接雇用
  • 違う職場の紹介
  • 無期雇用契約の紹介
  • 紹介予定派遣の紹介

のいずれかを受けられます。これにより、次の就業先を確保することができます。

 

ただし、注意点が一つ。

直接雇用の希望が叶った場合、無期雇用契約というだけで雇用形態は正社員になるとは限らないこと、派遣労働者の時よりも給与面が低くなる可能性もあるということも覚えておきましょう。

また、同じ派遣元で仕事をしていく場合、1ヶ月以内には新たな仕事を始めましょう。

1ヶ月以上経ってしまうと、これまでに取得していた有給休暇の資格を失ってしまいます。

③ 安定した派遣会社を選ぶ

派遣会社選びも極めて大切な対策です。

5年ルール・2018年問題に対して、対策を打ち出していない。

もしくは派遣スタッフが多すぎて対策しきれない派遣会社も出てきます。

その際にお客様、つまり就業先である企業を優先させて、あえて派遣スタッフに仕事を紹介せずに雇止めをすることもあるでしょう。

それを防ぐために、

派遣会社選びのポイント
  • 求人数の安定した大手の派遣会社や評判の良い派遣会社
  • 2018年問題に対して対策を打ち出している派遣会社
  • もしくは派遣スタッフへのフォロー体制がしっかりしている派遣会社

を選ぶことが重要です。

 

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派遣労働者にはメリットが多い2018年問題

2018年問題は、労働契約法および派遣労働者法の改正により、派遣労働者にとって働きやすい環境を作りました。

雇用安定化の措置を利用すれば、契約期間が満了しても次の雇用先の紹介や直接雇用を得ることができます。

さらに、キャリアアップ訓練や均衡待遇の推進が義務づけられたことで、派遣労働者はこれまでに比べて労働環境も良くなり、昇給のチャンスも増えていきます。

しかし、改正によるデメリットとして、働く先が少なくなる・雇止めが増える可能性はあります。

今後は良い労働環境になるか、就業先が少なくなってしまうかはあなたの行動次第になるでしょう。

現状を知り、どう行動するか。しっかりと考えて一歩一歩進むことが重要となります。